その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~

「仕事したいので出て行ってくれますか?」

取り繕うのもアホくさく思えて冷たい視線を送ると、珍しいものでも見たような驚いた表情で私を凝視する。

「え、ほんとにしないの?」
「え、何ですると思ったの?」

思わず敬語も忘れて突っ込んでしまう。

「はじめて断られた…」

今まで同じフロアにデスクがあるというだけで話したこともない人だけど、なんとなくモテるというのは知っていた。最近ではあまりよくない噂を耳にすることもあった。

現場に来て差し入れをしているところを見かけたことがあるくらいで面識はなかったけど、まさかこんなクズだったとは…。

イケメンだともてはやされ許されてきたせいで、正常な感覚が麻痺してしまっているんだろうか。

そうだとすればいい年してだいぶ残念な男だ。


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