その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~

「ポジティブですね」
「じゃないと営業職はやってらんないよ」

なるほど、確かに彼にとって営業という仕事は天職だと思う。
もちろん、営業職がポジティブというだけでやっていけるものではないことは理解しているが。


私の先程の戯言を思い出して「それにしても、何その法律…」と目に涙を浮かべるほど笑っているのは、友藤遊人(ともふじ ゆうと)。
私の3つ年上の28歳。

180センチ近くありそうな長身に細過ぎずマッチョ過ぎずなバランスの取れた体躯はスーツが嫌味なほどよく似合う。
少し垂れ目がちな瞳にスッと通った鼻筋、薄い唇。
絶世の美形とはいかないまでも、そこそこ整っていると思う。

営業職にしてはかなり明るい茶髪が目にかかる長さの髪を、かなり緩めにワックスでスタイリングしているチャラいヘアスタイルのおかげで、イケメンに見えなくもない。

個人的には雰囲気イケメンに属する部類だと思っている。


そんなチャラそうな見た目に反して、仕事はとてつもなく優秀だからタチが悪い。

どんな相手にも怯まず対峙出来て堂々としているだけでなく、先方の情報を細かく調べて会話をリードしていくコミュニケーション能力も高い。

垂れ目で人当たりの良さそうな顔と、わざとなのかふとした時に若干崩れる敬語で相手の懐にスッと入り込む人たらしスキルを武器に、営業成績は群を抜いている。

< 3 / 110 >

この作品をシェア

pagetop