その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~
「何事だ」
「ぶ、部長…」
「おや、君は確か…」
騒ぎを起こした社員を一睨みすると、朱音に視線を移す。
「ご無沙汰しております、原田部長。お騒がせして申し訳ありません」
頭を下げる彼女と、ここにいるメンツを見て何があったかを悟ったのだろう。
上役の耳にまで当時噂が届いたのだとすれば、彼女がどれだけ辛い立場だったのか、考えるだけで腸が煮えくり返る思いだった。
「いや、君が謝ることはない。今の佐藤の発言で全てわかった」
唇を噛んで泣くのを堪える彼女をもう見ていられない。毅然として言い放った。
「以前何があったのかは存じませんが、うちの大事な職員が不当に傷付けられた相手は信用出来かねます。早急な謝罪がない限り、来週には契約解除通告書にサイン頂きますのでよろしくお願い致します」