その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~
さらに噂のせいで異動になったことを私のせいにすることも、自分で止められない美香のことをヒステリック女呼ばわりすることも、付き合っていた当時の事情を他人の前で暴露することも、最低過ぎてなぜこの男の唯一になりたくて悩んでいたのか当時の自分に半日かけて説教したいくらいだった。
仲の良いイケメン同期に告白されて舞い上がって付き合い出した自分の見る目の無さを心から恥じた。
それでも、ただでさえ自分の独占欲の強さに悩んでいた私にとって、恋愛に若干二の足を踏む気持ちにさせた出来事だったのは事実。
しばらく恋愛はお休みでいいかもと思っていたところに転職してクズ男の友藤さんと出会い、女性と最低な付き合い方をしている彼を見ていたら、この人と真逆の未経験の人ならいいじゃないかと色々考えた末『Dの男』を探そうと決めた。
それなのに…。
『以前何があったのかは存じませんが、うちの大事な職員が不当に傷付けられた相手は信用出来かねます』
いつもチャラくてへらへら笑っている友藤さんが見せた、堪えきれないような怒りの顔。私を守るように抱き寄せてくれた力強い腕。
私のために怒ってくれた友藤さんに不覚にもドキドキしてしまった。こんなのずるい。
優秀な営業の友藤さんなら、もっと穏便に対処出来たはずなのに。ただの同僚を守ろうとしたにしては行き過ぎた行動に、疼いてはいけない何かがじくじくと痛みを覚える。