その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~
◇◇◇
奈美と飲んだ週の金曜日。
今週はずっと地下3階の資料室でファイル整理をしている。
正直、もうここにはあまり来たくないと思っている自分がいる。
今まで何も感じたことはなかったのに、あの書架の裏で重なり合っていた2人の姿が、今更ながら思い出されて胸が締め付けられるようになってしまった。
このままではマズイ。
そう感じた私は、奈美の提案に乗ることにした。
飲んだ次の日の夜には【金曜19時から楽しいお食事会開催】という文字と店のURLが送られてきて、奈美の行動の速さには驚かされる。
思い立ったら即行動の彼女が、私が来月から秋の繁忙期で忙しくなると知って、その前にと自分の職場でメンバーを集めてくれたらしい。
今朝早くに【店の近くにホテル有り。持ち帰られてもいいよう万全で!】というメッセージが来ていて笑ってしまった。ヤるヤらないはともかくって言ってたのは何処の誰だ。『楽しいお食事会』は下ネタですか。相変わらずの奈美節だ。
男女4人ずつ、イタリアンレストランで待ち合わせ。
きっとそこにDの男はいない。それでも、友藤さんほど過去の彼女が多い人もいないだろう。
それでいい。
過去の彼女の数は私にとって少ないに越したことはないけれど、それでもあの人に堕ちるよりはずっとマシだと思える。