その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~
健診の現場に出る時はパーテーションを組んだり動き回ることが多いので基本パンツスタイル。1日所内にいる時はテンプレのオフィスカジュアルが通常の私。
今日は合コン仕様で白のワンピース。
フレンチスリーブにはフリルがついていて、絞られたウエストからふんわりと広がるフレアスカート。
冷房対策に肩から薄いブルーのカーディガンを掛け、私にしては珍しく甘めな格好。
完全に開き直って男受けのみを追求した。奈美に『ヤる気満々じゃん』と笑われるかもしれない。
さらに華奢なブレスレットとネックレスも完備。どこからどう見ても『今日は定時で帰ります』スタイルだ。
いまだかつてこんな格好で来たことはないので、朝から遥ちゃんにデートかと散々からかわれたけど、合コンだと告げるとなぜかとても驚いていた。
資料室にかけてある時計を見ると午後5時半を少し回っている。ここの時計はなぜかいつも5分遅いので、もうとっくに定時を過ぎている。焦る時間ではないけれど、会場のお店はここから少し距離がある。遅れないようにさっさと会社を出なくては。
空になった段ボールを畳み、次回使えるように書架の隙間に入れておく。
台車を持って出ようと方向転換をしていると、カチャリと扉が開いた。
「……友藤さん」
ここ2週間、あからさまなほど避け続けてきた彼が、閉じた扉に背中を預けたまま無言で私を見つめている。