その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~
だが、彼女は自分で気付いているだろうか。
俺の告白に対し、いくら態度で突き放そうと、一言も俺自身を拒絶した言葉を発していないことに。
好きだという言葉に対し「無理」だとも「嫌い」だとも言わず、ただ構うなと繰り返す。
俺の酷い過去に嫉妬してしまうがゆえに受け入れられないのだと、俺を突っぱねるために闇雲に合コンなんかに行こうとしているのだと、そう考えてしまうのは『恋』に慣れていない俺の自惚れなんだろうか。
いや、自惚れでもいい。そうだとしても、もう朱音を諦めるという選択肢は俺にはない。
ここから電車で40分。乗り換えもあると言っていた。
そして、ホテルが徒歩圏内にあるという合コンに適したイタリアンレストラン。
座り込んだまま前髪をくしゃっと乱暴に掻き乱す。なんとか冷静になろうとひとつ大きく深呼吸をした。
今慌てて追いかけてもきっと追いつけない。ならば探し当てるだけ。
俺にとって朱音は『唯一恋に落ちた相手』なんだ。
逃さない、絶対に。