その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~
女性が多い会社に勤めているからなのか、彼らの元々もっている素質なのか、女性への気遣いがさりげなくて嫌味がない。第一印象はみんな優しそうでイケメン。
そういえば彼は夏でもジャケットにネクタイまで締めていた。営業職だからだろうか。
うっかり友藤さんのことを思い出してしまい、慌てて頭から小銭男を追い出す。
目の前に座っている岡部と自己紹介をした彼が「朱音ちゃん次何飲む?」と気遣ってくれる。
奈美以外は初対面の人ばかりなのでこの場で酔っ払うわけにはいかないと思いつつ、今日は何もかも忘れてお酒を飲んでしまいたい欲求に駆られた。
「じゃあ、杏露酒のロックを」
「それよく女の子飲んでるの見るけど美味い?」
「甘酸っぱいって感じです。普段はソーダで割ってますけど、ロックだとそこそこ度数もあるのでお酒好きな男性でもいけるかも」
「普段ソーダ割りなのに今日はロックなんだ?」
ニコッと笑うその目の奥に、分かりやすく誘うような色が見えた。
なるほど、合コンで強めのお酒を敢えて頼んでいる私は恰好のカモに違いない。
あぁ、慣れてるんだな。
岡部さんとの会話で得たのは、そんな感想だけだった。
もしも、この一連の会話をしたのが友藤さんだったら。
私は何を思ったんだろう。
合コンで酔った女の子をお持ち帰りし慣れているだろう彼に対し、きっと過剰なほど拒否反応を起こす。