その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~
「朱音ちゃん?」
目の前の岡部さんが不思議そうに私を見る。
ボーッとしてしまったのを恥じて取り繕うように微笑みを貼り付けた。
「すみません、こういう集まりって慣れてなくて緊張してるのかも」
ちょっと強めのお酒を飲みたい口実に本音を混ぜておく。
実際若干緊張はしてるけど、そこまで人見知りじゃない私は初対面の相手と打ち解けるのは得意な方。特殊なチャラ男を除いて。
「そうなんだ、可愛いね。よかったら2人で抜ける?その方がリラックス出来るかな」
奈美曰く『今日集めたメンバーは手は早いが悪い奴はいない。無理強いされることはないから嫌なら断りな』ということらしい。
なるほど手が早いというのは間違ってなさそう。
経験も豊富そうだし、慣れない私がリードしてもらって遊ぶには丁度いいお相手ということなんだろう。
さらに正真正銘のイケメン。雰囲気イケメンの誰かさんとは違って、切れ長の瞳が凛々しくへらへらしたところがない。
いっそ彼について行ってみれば。そう思った時だった。
突然ツカツカと聞こえた足音が近くで止まったと思ったら、後ろからむき出しの二の腕を掴まれ、ぐいっと立ち上がらせられる。
ぐらついた身体で「ひっ」と叫びにもならない小さな悲鳴を上げると、聞き覚えのある声が吐き出される息と共に耳に届く。