その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~

「ちょ、ちょっと…待って!ねぇ、友藤さん!」
「こら待てチャラ男!朱音!」

私の言葉に耳も貸さずにグイグイ進んでいた彼の足が、後ろから投げつけられた女性の声にピタリと止まる。

「奈美…」

振り返ってつい泣きそうになってしまう。彼が私が話していた『チャラ男』だと気付いて、心配して追いかけてきてくれたんだ。

「いいの?そいつについて行くの?」

彼女の問いかけは、私がこの先ツライ思いをするんじゃないかという心配がありありと見える。
それは今まで私が嫉妬に押し潰され失恋するたびに泣いている姿を見てきた奈美にとって、当然の質問だろうと思われた。
あれだけ今までの恋愛で過去にすら嫉妬していた私が、他の女性とシているところを目撃したことのある男を選ぼうというのだから。

でも、気付いてしまったのだ。
もう既に堕ちてしまっていることに。

小指で突かれるどころじゃない。ラガーマンにタックルされたような勢いで吹っ飛んだ。

こんな形振り構わず探し回って迎えに来られたら、もう降参するしかないじゃないか。

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