その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~

「ねぇ朱音ちゃん。今思ったんだけど、俺もある意味『Dの男』だと思うんだよね」

いつものヘラっとしら胡散臭い笑顔で私を見た。
意味がわからずに首を傾げて彼を見上げる。あなたのどこが童貞なのかと詰め寄りたいのを我慢して説明を待っていると。

「恋愛DT。だって初恋なんだもん」
「……へ?」
「だから俺にも朱音ちゃんの彼氏になる条件は満たしてる。君は俺の『唯一好きになった人』なんだから」

とんでもない屁理屈に聞こえるのに、そう言う彼の声は必死なほど切羽詰まっていて、軽く見せていたへらへらの笑顔は貼り付けていた偽物だとわかった。

「っふふ、ほんとですね。友藤さんも『Dの男』だ」
「朱音ちゃん」

私が笑うと、彼はやっと安心したように本来の笑顔を見せた。雰囲気じゃなく、本物のイケメンの顔。

その笑顔に力を貰って、私は自分の気持ちを伝えた。


「友藤さん。私を、最初で最後の『唯一の彼女』にしてくれますか?」


じわりと滲んだ涙を堪えながら必死で笑顔を作った告白に、友藤さんは「かわいすぎてつらい…」と呟いた後、先程よりも強く抱きしめて「もちろん。一生、朱音だけだ」と答えてくれた。

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