その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~

「朱音も、俺を『唯一の男』にしてね?」

そう言われ、頷き返したい気持ちは山々だけど、彼も知っての通り私には多くはないが元カレがいる。
どう返すのが正解なのかと抱きしめられたまま頭をフル回転させていると、耳元で小さく囁かれた。

「初めては怖いだろうし、今日は何もしない。朱音の気持ちが追いつくまで待つって約束する。だから泊まっていかない?もっと一緒にいたい」
「えっ?」

あまりに驚いて腕を突っ張って距離を取った。

『今日は何もしない』っていうのも「女性=セックスの相手」だった友藤さんにとったら大変なことで驚くべき発言だし、いくら金曜とはいえ気持ちが通じ合ったその日にお泊りというのも準備も何もなくて戸惑うところ。

しかし、今私が声を上げるほど驚き戸惑っているのはそこではない。まして『もっと一緒にいたい』という嬉しい発言に対してでもない。

友藤さんの『初めては怖いだろうし』という彼の言葉。


――――え、もしかして友藤さん。私のこと処女だと思ってる?


一体なぜそんな勘違いが成り立ったのかと、これまたフル回転させた頭で考える。

そして思い至ったのは、スパークルに行った時の賢治のクズ発言。

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