2人のあなたに愛されて~歪んだ溺愛と密かな溺愛~【リニューアル版】
樹……


あなたに協力したい。
つらくて悲しかった時、支えてもらったから。
だけど、私は、樹への答えをずっと出せないままでいる。


そんな落ち着かない精神状態で、一緒に暮らして大丈夫なの?
嫌な思いはさせない……って、きっと変なことはしないっていう意味だよね。樹さんは、私を大事にしようとしてくれてる。だったら、本当にシェアハウスするって感じでいいのかな……


しばらく協力して、そのうち沙也加さんが樹を諦めてくれたら……。そしたら、私はまた自分のマンションに戻ればいいんだよね。
それまでの同居生活、そう思えばきっと問題ない……


男女の関係にならない、ピュアな同居――


それが樹への恩返しになるなら……
役に立てるなら……
そう自分を納得させて、私は何とか気持ちを固めることができた。


「わかった、協力する。でも、沙也加さんが諦めてくれたら、私は……」


「それ以上言わなくていい。明日、連絡する」


私のマンションの前で車を止め、


「また明日」


お互いぎこちなく挨拶を交わして、私達は別れた。
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