2人のあなたに愛されて~歪んだ溺愛と密かな溺愛~【リニューアル版】
どうしたんだろう、気づいたら、私は樹の胸に飛び込んでいた。


ねえ、柊君。
私、あなたのことが本当に大好きだった。
好きで好きで仕方なかった。
一生、ずっと一緒にいたかった。


でも……
もう、何もかも全部忘れたい。
忘れてしまいたいよ。
これ以上、苦しい思いは……したくない。


柊君、お願い、私の心の中から消えて……
今すぐ私を自由にしてほしい。


そんなことを考える私を、樹は何も言わずに泣かせてくれた。


涙でぐちゃぐちゃになった顔。
恥ずかしさを堪え、その顔をあげて樹を見たら、その目は切なく、悲しい色をしていた。


樹、どうしてあなたはそんなに素敵なの――
思わず口にしてしまいそうになる。


もう……ダメ。
樹を求める感情がひとりでにこぼれ出し、手に負えないスピードで駆け出した。


樹は、その想いを見透かしたように、濡れた頬を両手で優しく包み、優しく私にキスをした。
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