2人のあなたに愛されて~歪んだ溺愛と密かな溺愛~【リニューアル版】
聞き馴染みのある声――
当たり前だ、いっつも聞いてた声だから。


大好きな柊君の、大好きな声。
でも、ほんの少しだけ違う、これは……


「俺、樹」


やっぱり、樹さんの声だ。


「こんな時間にどうしたんですか? 私の番号……どうして知ってるんですか?」


「会社の名簿見た。悪いな勝手に。ちょっと気になったから電話してみた」


普通なら嫌な行為だと思うのに、なぜか声が聞けてホッとした。


「いえ。わざわざ電話くれたんですね。心配かけて本当にすみません。私、樹さんにお礼を言わないといけなかったですね」


「お礼?」


「はい。樹さんが昨日一緒にいてくれたから、私、あまり取り乱さないでいられました。もし、樹さんがいてくれなかったら……どうなってたかわかりません」


「普通なら……きっと取り乱す。あの状況なら誰でも。なのに、柚葉は我慢したんだなって……そう思ってた」
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