お前の隣は俺だけのもの。
*第1章*

転校1日目

なんで。

なんで、なんで。



「えー。今日から新しいクラスメイトの、岩倉 陽菜さんだ」



なんで、あいつがここにいるの!?


いや。

“あいつ”なんて呼んではいけない。

なんで、“彼”がここにいるの!?



「岩倉さん? 自己紹介……」



担任の橘先生がなにかを隣で言っている。


自己紹介、だと?

そんなの今の私に出来るはずがない!

なぜなら、教室の窓際、1番後ろの席に座る“彼”の存在に驚いているからだ。


“彼”を指差したまま固まっている私。

しかも口を大きく開けて。


今にも叫びだしそうな私が、転校の挨拶の定番“自己紹介”なんて出来るはずがない!



「岩倉さん」



驚きとドヤ顔で、心の中がいっぱいになる。

心の中がドヤ顔でいっぱい、ってどういうこと。


いや、今は、そんなツッコミをしている暇はない。

忙しくもないけれど。


って、そうじゃなくて。



「岩倉 陽菜っ! “彼”に驚くのは仕方がないが、自己紹介くらいしなさいっ!」



キーーンッ!


隣で橘先生の、大きな怒鳴り声が私の鼓膜を突き破る。



「はいっ! すみませんっ!」



思わず謝るが、私は一体誰に対して謝っているのだろう。

教室からクスクスと笑い声が聞こえる。

“彼”は柔らかく微笑んでいた。
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