お前の隣は俺だけのもの。
うつむく私にため息をつく碧。

頬に触れていた手が離れていくのを感じた。



「……芸能界で仕事している奴とか、嫌だよな」



碧の苦しそうな声が聞こえた。



「それに暴走族の総長の彼女なんて、なおさら……」

「え……」

「“龍虎”の総長は2人、って話はしたよね?」



碧の言葉に頷く私。



「俺の彼女になるってことは、“龍虎”の“女総長”になるってことだから」

「うん……」

「そんなの嫌だよね」



壁についていた碧の手が離れる。



「嫌とかじゃ……」



私と碧の間に距離ができる。

それは物理的な距離じゃなくて。

なんだか、心が離れてしまったような、そんな感覚になる。



「じゃあ、なんで、返事してくれないの」



碧の切なくて、胸が締め付けられるような声。

思わず自分の気持ちを伝えてしまいそうになる。

『好きだ』と。


だけど、それを言うタイミングは今じゃない。

メールの犯人を見つけてから……。



「なんで、なにも言わないの……」



碧の今にも泣きそうな声にどうしたらいいのか分からなくなった。
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