お前の隣は俺だけのもの。
『入ってらっしゃい』



インターフォン越しに、ママの声が聞こえた。

久しぶりのママの声に、少しだけ涙腺が緩んだ。



「おじゃまします」



碧が私の手を握ったまま家に入っていく。

まるで、我が家、とでもいうように。

私も慌ててついていく。



「碧くん、格好よくなったわねぇ」

「お、碧くん。いらっしゃい」



ママ……。

パパ……。

娘が久しぶりに帰ってきたのに、『碧くん』なんですか。

もう、うちの両親は、昔から碧のこと大好きだよね。


リビングのソファに案内され座る碧。

その隣に私も腰掛けると。



「陽菜はコーヒーでも淹れなさいっ」



ママのお叱りが飛ぶ。


あれ?

似たようなことが、前にも碧の家で……。


まあ、いいか。

私はキッチンでコーヒーを淹れる。

碧と楽しそうに話しているパパとママ。


パパとママが碧に会うのは久しぶりじゃないの?

なんか、すぐ打ち解けちゃっているし。


私はコーヒーを淹れたマグカップを持ってリビングへ戻る。



「……碧くん、話ってなんだい?」



パパが碧を真っ直ぐに見る。

その言葉につられて、この場にいる全員が碧を見た。
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