お前の隣は俺だけのもの。
「岩倉さん?」



碧が携帯を差し出している。

これは、交換しないと、あとで怒られるパターンじゃ?

家に帰ったときのことを想像すると……。



「交換します」



碧は『ありがとう』なんて嬉しそうに携帯を握り締めている。

もう、碧の演技には慣れてしまったよ。


……残るは、あと1人。



「陽菜ちゃんーっ」

「……ハイ。どうぞ」



怜央だけ連絡先を教えないなんて、さすがにかわいそうかな。

何様のつもりよ! って、女子集団に睨まれてしまいそうだし。

これで、私の携帯には3人の名前が追加された。

まあ、使う日があればいいけどな。



「そうだ、碧。今日、家に行っていいー?」



怜央がさらりと、とんでもないことを口にする。

潤も頷いているし。

3人が仲良いのは、この会話から分かったけど。

碧の家に行くってことは、私が碧と同居しているってことがバレるじゃん!


それなのに、碧は。



「いいよ?」



なんて言うから、私は無駄に冷や汗を流した。



「じゃあ、また放課後ーっ」



そう言って、怜央は教室を出て行った。


あいつはどこに消えたんだ。

これから授業も始まるのに。

そんな私の心を読んだのか、潤が答えを教えてくれた。



「水樹は2年3組だから。俺らとは違うクラス」



ああ、そうなのね、理解。
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