お前の隣は俺だけのもの。
「陽菜?」



碧が低い声で私の名前を呼ぶ。



「はい」



恐る恐る返事をする私。

きっと怒られるんだ。

怜央と遊ぶな、的なことを言われるんだ。

でも、それは怜央が勝手に絡んできたことだし。

私は悪くない。



「ここ、誰の家か分かっている?」

「……碧のお家ですね」

「目の前でイチャつかれると、気分が悪くなる」



気分が悪くなるって。

そんなの私に言われても、って感じだし。

私だって、碧と同居したかったわけじゃない。


反論したいけど、反論したら鋭い目で見られるだけだし。

しゅん、とするしかない私も、どうなのかなって思う。



「まあまあ、碧。ヤキモチ妬くのは分かるけどー」



怜央が暗くなった雰囲気を、明るくしようとしてくれる。

それは嬉しいけど。

碧はヤキモチなんて。



「妬いていない」



って、言うでしょうね。

そんなの知っていましたよ。

知っているけど、なんだか悲しくなる。


なんでこんな感情になるのか分からないけど、少しだけ寂しいと思ってしまった自分がいる。
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