お前の隣は俺だけのもの。
「陽菜はさ、」

「うん?」



碧がため息混じりに呟いた。



「俺が恋愛ドラマに出ていてもいいの?」

「え、うん? お仕事でしょ?」

「そうじゃなくて」



はあ、とため息をつく碧。

そして、私に顔を向けたと思ったら。

碧の左手が私の頭の後ろにまわって、唇と唇が触れた。


キス、されている?


……なんで。

思考回路が止まった私から、そっと離れる碧。

自分の顔が熱を帯びているのが分かる。

そして、碧の顔もほんのり赤く染まっていた。



「こういうこと。ドラマの撮影でするんだよ?」

「っ、」

「陽菜なんて、ヤキモチでいっぱいになればいい」



そう言葉を残して、碧はソファを立った。

リビングを出て行く碧の後姿を呆然と眺める。


『ヤキモチでいっぱいになればいい』って。

まるで、碧がヤキモチを妬いているかのように聞こえる。


……キスだって。

私にとってはファーストキスだったのに。


碧は慣れているようだった。

それが嫌だ、と私の心が叫んでいるような気がする。

灰色の感情が胸の中に広がる。


今、私の頭の中は碧でいっぱいだ。
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