お前の隣は俺だけのもの。
「なんで、陽菜さんは家に帰るのが憂鬱なんです?」

「なんで、って……」



昨日の出来事を思い出す。

碧にドラマの撮影について聞こうと思ったら。

突然、キ、キスされて!

朝起きたら、碧の姿はなくて。

キスされてから碧と対面するのは、今日の夜が初めてかもしれない。


どんな顔で会えばいいのさ……。


凛ちゃんの問いかけに、正直に答えることも出来ない私。

自分から泣きついておいて、どうしたらいいんだろう……。

と、悩んでいると。


ガラガラッ!

部室のドアが勢いよく開いた。



「陽菜ちゃーん! 一緒に帰ろうー?」



怜央の元気な声と、その横でなぜか顔を背けている潤の姿があった。



「えっ。なんでここにいるの!?」

「あっ。桃園ちゃんも文芸部だったんだぁ」



凛ちゃんと同じクラスの怜央はヘラヘラしている。

っていうか、私の質問無視ですか。



「はい。文芸部です」



凛ちゃんは怜央の質問に答えたあと、肩をビクッと跳ねさせた。

どうしたんだろう、と凛ちゃんの視線の先を見れば、潤が立っていた。


あー。

もしかして、なるほど?

私、分かっちゃったかもしれない。
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