お前の隣は俺だけのもの。
しばらくすると、碧は顔を上げた。



「ガッカリした? 俺が総長やっているって、ドン引きした?」



碧の瞳を見れば揺らいでいた。

それと同時に、なにかを諦めたように苦笑していた。


……碧が暴走族の総長かぁ。


ガッカリもドン引きもしていない。

ただ、驚いた。



「九条が総長なら、俺たちは暴走族の幹部だ」



潤が小さな声で呟く。

だけど、その言葉はしっかりと聞き取れた。

じゃあ、3人が言う“仲間”って“暴走族のメンバー”ってこと?


頭が混乱する。

混乱するし、驚きを隠せないし、動揺するけど。


まずは、知りたいと思った。

話を聞きたいと思った。


“暴走族”って人に迷惑をかけるイメージしかなかったけど、この2週間を一緒に過ごした“彼ら”は“彼ら”なんだから。



「3人が入っている暴走族ってどんなグループ?」



純粋な疑問。

相手を知るには聞くことが1番だと思うから。

せっかく、こうやって一緒にいるのだから。

彼らの口から話を聞きたい。


流れる沈黙の後、最初に口を開いたのは潤だった。



「族の名前は“龍虎”だ。暴走族っていっても、誰かを殴ったりしない、危ないことはしない、っていうことがルールだ」



潤の言葉に納得する。

確かに、3人に喧嘩したあとのような傷跡は見られない。
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