お前の隣は俺だけのもの。
碧のキャラからして、暴走族の総長なんて、イメージがない。

悪魔みたいに見えるときは、たまにあるけれど、だから総長にふさわしいっていうことでもない。

それに、芸能界で活躍していて『実は暴走族総長でした』なんて、ニュースになったら、ただごとじゃない。

碧は世間からの非難の的になってしまうかもしれない。

芸能活動だって出来なくなるかもしれない。

多分、碧のことだから、そこは分かっているとは思うけど……。


私の質問に数秒の間があったけれど、碧は答えてくれた。



「守りたい奴がいるから」



そう、碧は言った。

見たことないくらい真剣な表情で。

真っ直ぐに私を見て。

そう、言った。


ドキッとした。

碧の瞳は真っ直ぐだったから。

私はその瞳を直視できなくて、視線をそらした。

そんな私に語りかけるように、碧は言葉を続ける。



「強くなきゃ、守れないから」



そういう碧は、可愛い碧でもなく、悪魔な碧でもなく。

純粋に格好いいと思えた。


だけど、心の中に広がる、もやっとした感情。



「碧にも、守りたいって思える大切な女の子がいたんだね!」



言葉にしてからハッとする。

自分の心に広がる感情を、そのまま口にしてしまった。


ここでなにも言わなければいいのに。

ここで口を開かなければいいのに。
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