お前の隣は俺だけのもの。
「遠く感じたんだよね」



碧と私の関係は遠いようで近かった。

そう思っていたのに。

今では、碧は手の届かない人だ。



「……それは“嫉妬”ですか?」

「嫉妬?」



凛ちゃんの言葉に首をかしげる。



「独占欲といいますか……。そのお相手の方のことを、陽菜さんは特別に思っているように感じます」



碧のことは特別に思っている。

独占したいか、って言われたら分からない。

だけど、私しか知らない碧を見たいと思った。



「……独占欲もあるかも」



私は苦笑する。

もう、涙は完全に止まっていた。


碧と再会してから、ずっと碧のことを考えていた。

今思えばそんな気がする。


碧の仕事量に心配するときもあれば、碧の真剣な瞳に揺れ動かされた。

時々、甘い雰囲気をかもし出す碧のことが頭から離れなかった。


この感情に名前をつけるとしたら。



「……“恋”ですね」



凛ちゃんの言葉に頷く私。


そうか。

私は碧のことが好きなんだ。

碧と再会してから、濃い時間を過ごした。

それは私にとって、かけがえのないものであって。

大切にしたい。

壊したくないものだった。


だから、碧に『守りたい奴がいる』って聞いたときは、胸が締め付けられるほど苦しくなったんだ。
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