お前の隣は俺だけのもの。
私はどうしたいのか。

考えたこともなかった。


最近はずっと。

『碧はどうしたら笑ってくれるのか』

『碧の体調は大丈夫なのか』

『碧の“大切な子”は、誰なのか』

そんなことばかり考えていた。


自分がどうしたいか、なんて自分に問いかけたこともなかった。

“自分自身と向き合う”って、昨日決めたばかりなのに。

私はどうしたいんだろう。



「……私は」



私は。



「碧のことを知りたい。ちゃんと、碧と向き合いたい」



私の心の底に眠っていた感情が動き出す。

そんな私の頭に怜央はぽんっと手を置く。



「うん。陽菜ちゃんのやりたいようにやってみな?」

「そうしてみる。……でも」

「ん?」



怜央が首をかしげる。



「ちょっと怖いんだ。……碧に突き放されたらどうしようって」



呟くように弱音を口にする。


怖い。

そう口にすればするほど、自分に自信がなくなる。

私のやりたいように行動して、碧が離れていったらどうしよう……、と。
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