お前の隣は俺だけのもの。
『なんでなにも言わないの?』

『……それは』



碧のセリフに対してミクさんが答える。

2人はどこからどう見ても恋人に見える。

多分、この話は碧が演じる男の子がヤキモチ妬くシーン。

それなのに、甘い空気が会場を包み込む。

2人がかもし出す、甘いドキドキとした空気に、チクッと胸が痛む。

だけど、これは演技なんだ、と自分に言い聞かせる。



『もういい』

『えっ……?』

『言っても分からない人にはお仕置きだから』



ソファに座っていた碧が体勢を変えたと思うと、身を乗り出して。

ミクさんに迫る。


そして。

ミクさんにキスをした……。


頭がフリーズする。

体も硬直して動くことが出来ない。


これは演技。

それは、分かっているのだけれど。


目の前に好きな人がいて、その好きな人が他の女の子とキスしているシーンなんて見たら。


耐えられなくなった。

逃げ出したくなった。
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