お前の隣は俺だけのもの。
「2人とも悪かったな。陽菜は連れて帰る」



碧の鼓動が聞こえる。

碧が言葉を発するたびに振動が伝わってくる。

止まっていた涙が再び溢れ出した。



「おー。ちゃんと話し合いなよ?」

「分かっている」



碧は私を抱きしめる腕を緩めた。

掴んでいた腕を引っ張り、階段を下りる。


涙が止まらなかった。

碧と触れていることへの嬉しさなのか。

碧が私以外の女の子とキスしている姿を見てしまったからなのか。


自分の感情が分からない。


碧に引っ張られて、建物の外に出る。

腕は握られたまま歩き続ける。

向かう先は、多分。

私たちが過ごしているマンション。


碧に引っ張られるように歩く私。

小走りで追いかける私に気づいたのか、碧は歩くペースを緩めた。


もう、すっかり日が暮れている。

空は暗くなっていて。

月がぼんやりと見える。
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