先生がいてくれるなら③【完】

「そもそも、どうして藤野先生があんな風に体調の悪い生徒に目配りするか、知ってる?」


椿の言葉に、私、美夜ちゃん、悠斗が首を横に振る。


「あれね、“他の生徒が授業に集中できないから” なんだと思う」


「え、ホントにぃ!? 私はてっきり生徒本人の心配してるからだと思ってた!」


椿に対する美夜ちゃんの返しに、私と悠斗は、同じく、と深く頷く。


「それに気付いた時、もう、本当に清々しいまでに数学のことしか考えてない人なんだな、って思ったわ」



──先生、ちょっとは生徒の身体の心配もして下さい……。



「それが、よ? 明莉のこと心配して追いかけさせるし、挙げ句の果てに『ありがとう』よ? びっくりしちゃった」


先生のことを一番よく知ってる市橋君も「そうだね、先生はいつも生徒との線引きはハッキリしてるから、そう言うの絶対言わないもんね。でもまぁ、相手が立花さんだから納得だけど」、なんて事を言い始めて……。



うわーっ、うわーっっっ……!!


思わず熱くなった頬を両手で包んで隠した。


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