先生がいてくれるなら③【完】


──待てよ、待ってくれよ……。


まさか、そんな事無いよな?


高峰が立花に何かして、立花が怪我した高峰にお節介やいてるとか、そんな事、無いよな……?



俺は思わず、座っていたソファから勢いよく立ち上がった。



「あ、ようやく分かった?」


気の抜けるような声を出す元同僚を見つめると、俺を見ながら、うん、と頷いている。



「……だって、そんな事って……」



だけどまだ自分の中で完全には消化しきれない。


だって────


立花が俺に別れを切り出したのって──、


それって、高峰が立花に何かをしたからで──、


俺は立花の言葉を真に受けて、まんまと高峰の策略に嵌まってしまったって事、だろう!?



そんな、


そんなことって──────



俺はガクリと項垂れて、ソファに座り込んだ。



だが、何度考えても、行き着く答えは同じ。


今までバラバラだったパズルのピースが、岩崎の言葉を号令に、全てが正しい場所に収まってカチリと音を立ててはまる。


それ以外に答えは無いと思い知る。



俺は──、俺は自分が悲劇の主人公気取りで……立花の苦しみに何一つ気付いてやれなかった。


高峰のことを思い出したくない、その一心で、考えることから完全に逃げてた。



俺は──


俺は、バカだ。


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