先生がいてくれるなら③【完】
「全て俺のせいだよ。高峰の気持ちに気付いていたし、過激になりがちな考え方も知っていたのに。あいつが納得できるまでちゃんと話をするべきだった。今は本当に後悔してる」
先生の表情がまた悔しそうに、悲しそうに歪む。
先生の気持ちも、彼女さんの気持ちも、高峰さんの気持ちも……どれを思っても、どれも悲しい。
「今回、高峰がお前に何をしたのか、光貴も親父も何も教えてくれなかった。だけど、あいつ、お前に何かしたんだろう? だからお前は……」
「先生、もう良いじゃないですか、全部終わったんです」
私は先生の言葉を遮った。
高峰さんが私に何をしたかを、先生に言うつもりは無い。
光貴先生も教授も、私のその気持ちに気付いていて、だから先生には一言も伝えなかった。
心の中で二人にお礼を言う。
今度病院に行って、ちゃんとお礼を言わなくては。
「──全部、終わったんです」
繰り返して言う私に、先生は顔を顰めた。
「終わったって、……何を指して言ってる?」
「……だから、全部……」
「俺とお前の事もか?」
「……そうです」
間が悪く、赤信号で車が止まる。
先生が私の方に顔を向けるよりも早く、私は先生から視線を逸らせた。