先生がいてくれるなら③【完】


「……久しぶりだな、こうやって二人でコーヒー飲むの」

「そうですね……」


先生はすぐに話を切り出す気はないらしい。


だったら、私から。



「先生」

「……うん」

「話って、何ですか?」

「……」


先生は、はぁ、とため息を一つ吐いて、コーヒーの入ったグラスをテーブルに置いた。


氷がグラスとぶつかって心地良い音を立てる。



「高峰に何をされたか、出来れば話して欲しいんだ。立花にとっては辛いことなのかも知れないけど、俺にだって無関係じゃ無いだろ? 知っておきたいんだ」


辛いことなんかではないけど……、高峰さんがした事を告げ口するようで気が進まないから、言いたくないんだよね……。


「……ひとつ聞いても良いですか?」

「いいよ」

「……私のこと、怒ってないんですか? あんなこと、言ったのに……」


先生は少し考えて、ふぅ、と小さく息を吐き出し、そして、ゆっくりと話し出す。


「……最初は怒ってた。やっぱり我慢してたんだ、どうしてもっと早く行ってくれなかったんだ、って」


先生はそう言って、小さな声で「ごめん」と付け加えた。


先生が謝る事なんて、ひとつも無い。


私は首を小さく横に振った。

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