先生がいてくれるなら③【完】

でも、そもそも私が先生に好きだって言わなかったら、付き合うことにはならなかったんじゃないかと思う。


私の我が儘で、私の独りよがりな感情を優先して先生に告白なんかしたから……、だからこんな事になったんじゃないか、って思うんだ。



「全部、私の我が儘なんだよ。私が先生に告白なんかしなかったら、こんな事にはならなかった。先生を困らせたりしなかった……」



私は俯いて、膝の上に乗せた手をギュッと握りしめた。



「私はそうは思わないよ、明莉。だって、前にも言ったけど、修学旅行の時の先生は本当に明莉のこと心配してたし、今すぐにでも明莉の所に行きたいって感じだったもん。生徒の前では絶対に感情を露わにしないあの藤野先生が、だよ?」


美夜ちゃんの言葉に頷いたのは、市橋君だった。


「僕も滝川さんと同じ意見だよ。この中では一番藤野先生を知ってる僕としての私見を言わせて貰うと、部室でもびっくりするぐらい私情丸出しの顔してたからね」


そして市橋君の言葉に頷いたのは、悠斗だった。


「──悔しいし認めたく無いけど、アイツの明莉に対する気持ちは本気だったと思う。『教師失格だって分かってても手放せない』って、アイツ、そう言ったから……」





──待って。


待って、待って、待って……!



なにこれ。


何の公開処刑なの!?


恥ずかしすぎるし、……嬉しすぎるんですけど!



瞳の表面に膜が張り始めて、途端に視界がぼやける。


そこへ、椿がとどめの一言を私に向けて放った。


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