先生がいてくれるなら③【完】
先生は、私が嬉しくなる言葉を知ってるんだと思う。
そんな風に言われて、嬉しくないわけ、ないじゃない……。
「なぁ、あの時の言葉って……本心じゃないんだろ?」
だから、そんな言葉は、ずるい。
それ、私の気持ち、分かって言ってるよね……?
──だけど、答えられない。
だって、私はもう先生を巻き込むのは嫌だから……。
答えられずに黙っていると、膝の上に乗せていた私の手の上に先生の手が重ねられ──私の肩が思わずビクリと跳ねる。
「──先生、ずるい……」
──だって、手が重ねられただけで、先生の、言葉にはしなかったいまの本当の気持ちが分かってしまった……。
「俺が “暴君” だって知ってるくせに。それでも良いって言ったの、お前だろ?」
うっ、それを言われると…………。
「俺は利用できるものは何でも利用する。それでお前をもう一度手に入れられるんなら、卑怯でも何でも良い」
──先生、ずるい、ずるいよ……。
先生の手の下で、私は自分の手をギュッと握り締めた。
それを合図にしたかのように、先生が私の手を引いて優しく抱き寄せられる。
先生の腕の中は、やっぱり安心する。
ダメだって分かってても、すごくすごく嬉しくて、心が安らいで、思わず目に涙がにじんだ。