先生がいてくれるなら③【完】
ソファに座っている体勢で引き寄せられたから、私は少し低い姿勢で、私の頬が先生の胸のあたりに密着していて……。
────えっ?
私は思わず驚いてしまう。
そして、やっぱり先生はずるい、と思った。
先生のシャツをギュッと握って抗議の意志を示すと、先生がクスッと笑う。
「利用できるものは何でも利用するって、言っただろ?」
そう返され私は、やられた、と思った──。
だって、私の耳に伝わってくる先生の心臓の音が、ものすごく、速かったから……。
私がどう答えるか、どう反応するか、きっと……緊張してくれてるんだ。
それに、さっき私の手の上に乗せられた先生の手、びっくりするぐらい冷たかった。
いくらここが “超” が付くほどの高級マンションだと言っても、地下駐車場からこの部屋までの道のり、暑くなかったわけじゃない。
それなのにあれだけ冷たい手をしてるって事は、運転中からずっと、そして今も、私なんかに対して緊張してくれてるって事だから──。