先生がいてくれるなら③【完】
好きになってはいけない女性を、好きになってしまった──。
最初から、分かっていた。
頑張ってる子がいるなって思ってるだけなら、良かったのに……。
その頑張りをただ見ているだけなら、問題なかったのに……。
だけど、
彼女の心の優しさを知ってしまうと、抜け出すことが出来なくなってしまった……。
芯の強さを知ってしまうと、もう引き返せなかった……。
自分の中だけで留めておくべきだった。
自分に好意を持ってくれていることに浮かれて冷静になれなかったことを、いまとても後悔している。
『我慢するのに疲れた』と言われて、何も疑わずにその言葉を信じ、勝手に傷ついた気分になっていた。
『別れて欲しい』と言われて、全然納得いかないくせに、首を縦に振った。
何故彼女がそう言ったのかを、深く考えもせず、突き放すように遠ざけた。
自己保身のために、考えることをやめた。
彼女のことを考えると心が痛くて泣きそうになるから、二度と顔も見たくなくなった。
けれども、そう思うたびに、あまりにも彼女を愛しすぎている自分に気付かされて、愕然とした。
あの時、もっとちゃんと話を聞くべきだった、そう思っても、もう遅い。
大事な女性は、俺の元から去ってしまった。
愛してたのに。
今もまだ、こんなにも愛しているのに──。