先生がいてくれるなら③【完】
好きになってはいけない女性を好きになってしまったけれど、“好きになったこと” を後悔はしていない。
後悔なんか、するはずもない。
俺の灰色の人生をここまで見事に鮮やかな色に塗り替えたのは、彼女だから。
物心ついた時からずっと止まっていた時間を、再び動かしたのも、彼女だから──。
彼女を再び手に入れるには、どうしたらいいんだろう……?
彼女の心を再び俺の方に向けるには、俺は何をすればいい……?
本当は分かっている。
全てをさらけ出すしか無いのだ。
みっともなくても、『もう一度、俺を見てくれ』と懇願するしかないのだ。
もちろん、そうしたからって、必ずしも振り向いて貰えるとは限らない。
だけど、やらないで終わるのは、もっとみっともない。
無情にも時は流れて行く。
もう一秒たりとも離れていたくないのに、一緒にいた時間よりも、離れていた時間の方がどんどん長くなる。
それが、辛くて、苦しくて、心が潰れてしまいそうだ。
彼女を取り戻さなければならない──。
再びこの腕に抱き締めたなら、もう離れていかないように、たっぷりと甘やかそうと思う。
もう俺以外、見えなくなるまで──。