先生がいてくれるなら③【完】
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墓地の駐車場の車内で、俺は立花が来るのを待っていた──。
梅雨が明けたこの日、燦々と照りつける日差しの中を歩いてこちらにやって来る立花の姿が見え、俺は車のドアを開けて外に出た。
よく見知った車が止まっていたことで俺が来ている事は気付いていたのだろう、表情が明らかに硬い。
バスで来たのなら、俺の横を通り過ぎなければバス停には行けないはずだ。
こちらに向かって歩いて来る立花を俺は少し緊張しながら待っていた。
──何て言おう……?
謝らなきゃいけないし、お礼も言わなきゃいけない。
俺の思いを全部伝えなきゃいけない。
そんな俺の横を、立花は一度も立ち止まること無く通り過ぎようとする。
「──立花」
俺が声を掛けると、少し通り過ぎて──俺の少し後ろで、足を止めた。
そんな所で止まったのは、明らかにわざとだろう。
俺は立花の方に身体の向きを変え、ゆっくりと歩み寄った。
それまで真っ直ぐ前を見ていたのに、俺が近づく気配を感じて俯いてしまう。
立花と向かい合うように立ち、もう一度優しく声を掛けた。
だが、顔を上げる気は無いようだ。