先生がいてくれるなら③【完】
「──おいおい、乗り換えなんじゃねぇの?」
俺はひとり車の中でそう呟いた。
墓地の前からバスに乗った立花は、家に帰るためには一度乗り換える必要がある。
乗り換えの時にでも立花を捕まえてやろうとバスを追いかけたはいいけど……降りるはずのバス停で降りる気配がない。
その後、赤信号で停車するたびにあいつの携帯に何度かかけてみるが、出る気配がない。
「ちっ。サイレントにしてやがるな」
それでもそのうち気付くかも知れないと、何度もかけてみる。
立花の乗ったバスは、いよいよ終点まで来てしまった。
さすがに終点で降りないはずはなく、他に誰も降りる乗客のない中、立花がバスのタラップを降りて地面に降り立った。
少し離れた所に車を停めた俺は、もう一度あいつの携帯をコールする。
……って、出るわけねぇか、サイレントだもんなぁ。
くそっ。
とりあえずメールやらメッセージやら、ありとあらゆる手段で携帯にアプローチするが……、サイレント、だもんなぁ……。