先生がいてくれるなら③【完】
それにしても──、
「……久しぶりだな、こうやって二人でコーヒー飲むの」
「そうですね……」
なんだか落ち着く。
お前、癒やし効果抜群の愛玩動物だろ、絶対。
そんな風に癒やされてたのに──
「先生」
「……うん」
「話って、何ですか?」
「……」
容赦ねぇな、お前。
俺は、はぁ、とため息を吐いて、グラスをテーブルに置いた。
可愛らしい愛玩動物みたいなくせして、爪が鋭すぎるんだよ。
ほんと容赦無く引っ掻くんだからなぁ、おかげで緊張してきたよ。
「高峰に何をされたか、出来れば話して欲しいんだ。立花にとっては辛いことなのかも知れないけど、俺にだって無関係じゃ無いだろ? 知っておきたいんだ」
高峰が何をしたか具体的には分からないが、あの女のことだ、かなり恐ろしいことをやったに違いない。
立花の内面を傷付けてズタズタにしててもおかしくない、あいつはそんなヤツだ。
身構える俺に、立花は「ひとつ聞いても良いですか?」と尋ねた。
そして「私のこと、怒ってないんですか? あんなこと、言ったのに……」と、とても悲しそうな顔をしている。
──あの時の、あの言葉。
そうだなぁ。
「……最初は怒ってた。やっぱり我慢してたんだ、どうしてもっと早く行ってくれなかったんだ、って」
全て分かった今では、俺のこの言い分はあまりにも自分本位過ぎたと思う。
だから、小さな声で「ごめん」と付け加えた。
立花はそれに小さく頭を横に振る。
謝らなければならないのは、それだけではない。
高峰の事は、全て俺の責任だ。
俺が頭を下げると、立花は、自分が悪いのだ、と言う。
そんなわけない。
誰がどう聞いたって、俺が悪いって言うに決まってる、間違いなく悪いのは俺だ。
「私、先生に告白したこと、後悔してます」