先生がいてくれるなら③【完】

「……で、何があったんだ? あいつはお前になにをした?」


「えっと……私に会いに来たのは、12月26日でした。ある事と引き替えに、先生と別れろって言われて……」


「“ある事と引き替え”? 何と?」


「……まぁそれはいいじゃないですか、そこは私の話の中では重要じゃ無いです」


「は? 一番重要な所だろ?」


まぁ本来はそうですけどね、でも私はそれを言う気は無いんで。


「えっと、とにかくそう言われてですね、あんな事になったわけですけど……」


私が言い淀むと先生は “あの日” の事を思い出したのか、表情が曇った。


私だってもう思い出したくないけど、自分が言ったことだし、どうしようもない。


そしてあの時も今も、猛烈に申し訳ないと思ってる。


「傷付けてしまって、本当にごめんなさい……。言い訳でしかないって分かってるけど、その……本心じゃないですから……」


「うん、分かってる」


先生の言葉にホッとするけど、傷付けたのには変わりは無い。


私がシュンとしてるからか、先生の大きな手が私の頭に伸びてきて、優しく撫でてくれた。


頭を撫でながら「……それで?」と続きを促され、私は重い口を開く。


< 140 / 352 >

この作品をシェア

pagetop