先生がいてくれるなら③【完】
「……その後、しばらく高峰さんからは何の連絡も無かったんです。理由はよく分かりません、特に何も聞いて無くて。でも、5月の連休が明けてすぐぐらいに光貴先生から呼び出されて……」
「……屋上で会った、あのちょっと前?」
「そうです」
「屋上で会った時は、高峰が意識を取り戻したって連絡だった……?」
「はい」
「……光貴と連絡先交換してたんだ」
「えっ?」
思いもよらない先生の言葉に、私は思わず目を見開いて先生を見つめた。
先生は私の頭に手を乗せたまま、不機嫌そうに私を睨んでいる。
「あ、あの、実は、去年私が怪我をして入院してる時に、その……連絡先を交換してて……」
私がそう言うと、先生は頭に乗せた手をするりと私の左頬に滑らせて──ギュッとつまんで、そのままむにーっと引っ張った。
「せ、先生、痛いっ」
そう声を上げても、私の左頬は先生の手によって引っ張られたままお餅のように伸びている。
「せんせ、痛い~」
「お前、どんだけ危機感欠如させれば気が済む!? 光貴だって男だろ、ちょっとは警戒しろ!」
先生はそう言い終えてから最後にもう一度キュッと強く私の左頬を引っ張って、やっと手を離してくれた。
「……いたた、先生、ひどい……」
きっと私の頬は左だけが異常に赤く腫れ上がってるに違いない。
ぐすん。