先生がいてくれるなら③【完】
苦しさから目に涙が貯まり、目の端からツーッとひと筋こぼれ落ちる。
それに気付いた先生が、やっと唇を離した。
フッと笑って、「なんでいつも息止めてんの」と言いながら私の頭をグシャグシャと撫でる。
なんで、って、……いつ、どうやって、息するの……?
「そんなんじゃ、いつまで経っても大人のキス出来ないよな」
大好きな美しすぎる悪魔は、はぁ、はぁ、と息をする私を見下ろしながら、意地悪く笑っている。
──大人の、キス……?
それ、なに……?
そんなの、有るの……?
私の心の声は全て顔に出ていたらしく……。
「……してみる? 大人のキス」
ますます悪い顔で、私の顔を覗き込む。
こ、これ以上苦しいのなんて、無理っ……!
私はゆるゆると首を横に振ると、先生は笑いながら「うそ。子供にはまだ早すぎるから、しないよ」と言って、私から身体を離した。
……はぁ、良かった、助かった……。
私はまだ息が整わないので起き上がれずにいると、「いつまでもそうしてたらもっかい襲うけど、いい?」と言われ、私は慌てて起き上がり肩で息をする。
あ、悪魔……。
暴君じゃなくて、今日はホントに悪魔ですよ、悪魔!!
暴君の方がまだマシだった……、いやどっちも一緒か……。