先生がいてくれるなら③【完】

苦しさから目に涙が貯まり、目の端からツーッとひと筋こぼれ落ちる。


それに気付いた先生が、やっと唇を離した。



フッと笑って、「なんでいつも息止めてんの」と言いながら私の頭をグシャグシャと撫でる。


なんで、って、……いつ、どうやって、息するの……?


「そんなんじゃ、いつまで経っても大人のキス出来ないよな」


大好きな美しすぎる悪魔は、はぁ、はぁ、と息をする私を見下ろしながら、意地悪く笑っている。



──大人の、キス……?


それ、なに……?


そんなの、有るの……?



私の心の声は全て顔に出ていたらしく……。


「……してみる? 大人のキス」


ますます悪い顔で、私の顔を覗き込む。


こ、これ以上苦しいのなんて、無理っ……!


私はゆるゆると首を横に振ると、先生は笑いながら「うそ。子供にはまだ早すぎるから、しないよ」と言って、私から身体を離した。



……はぁ、良かった、助かった……。



私はまだ息が整わないので起き上がれずにいると、「いつまでもそうしてたらもっかい襲うけど、いい?」と言われ、私は慌てて起き上がり肩で息をする。


あ、悪魔……。


暴君じゃなくて、今日はホントに悪魔ですよ、悪魔!!


暴君の方がまだマシだった……、いやどっちも一緒か……。


< 146 / 352 >

この作品をシェア

pagetop