先生がいてくれるなら③【完】
「……新しい目標?」
「そうです。医療環境にある子供とその家族を、心理的な面から支える仕事に就くための勉強を始めるそうです」
「あの高峰が? 子供のため……?」
「そうですよ」
「……にわかには信じがたいんだけど」
そうだよねぇ、私も最初はとても戸惑った。
だけど……
「でも、それが本当の彼女、なんですよ」
「……本当の、……」
「人の上に立つようにご両親から教育されて来たらしいですけど、それは本当は不本意だったって言ってました」
“自分は本当は人の上に立てるような人間じゃない”、って……。
「少し身の回りの環境を整えたら、アメリカに留学して資格を取るそうです」
「……ふーん」
「先生、そんな『興味ない』みたいな返事、いやです」
「……だって興味ねぇもん」
「もうっ」
私が先生の肩をペシッと叩くと、先生が私の腕を捕まえてしまった。
あ、まずい……。
──そう思った次の瞬間には、もう先生の腕の中で……。
「お前のお節介も、時々は役に立つって事か」
「時々、って何ですか!? いつも役立ってますっ」
私が悔し紛れにそう言うと、先生は「はいはい」って言いながら、私の頭を撫でた。
完全に子供扱いだし……。
でも、まぁ仕方ないか、先生から見たら私はやっぱりまだまだ子供で、多分心配ばっかりかけてるんだと思う。