先生がいてくれるなら③【完】
「俺が光貴に嫉妬してるって、思わないんだ……?」
ギュッと抱き締めてそう言うと、そんな事は完全に想定外だったらしく、「えっ!?」と驚いている。
まったく……。
しかも、光貴だけでなく、親父も広夢も、立花に完全に手懐けられていて、全くもって気にくわない。
「……お前、絶対 “人タラシ” だろ」
そう言う人間は、確実に存在する。
どんな相手でも上手く手玉にとって、魅了してしまうような人間が──。
きっと立花はその手の種類の人間だと思う。
「うっ……、た、高峰さんにも同じ事言われました……」
「……あいつの事は嫌いだけど、なかなか見る目があるな」
相手が高峰ながらも、俺は思わず感心してしまった。
しかも高峰は立花のことを『天性のタラシ』だと言ったらしい。
──可笑しすぎて、笑いが止まらなくなった。
高峰にしては上手いことを言う。
さしずめ、俺も立花にタラシ込まれたクチなのかも知れない。
うん、きっとそうだ。
そうでなければ納得が行かない、この俺がこんな小娘にいいように手の平で転がされてるなんて。
──だけど。
そんな小娘が可愛くて仕方ない。
どうしようもなく、愛しくて、仕方ないんだ。