先生がいてくれるなら③【完】

せっかくの久しぶりのデート、すぐに帰るには忍びなく、目的外の店にフラリと立ち寄ろうとすると、立花に「ダメです、買いませんからね!」と言われて引っ張られる。


確かに元々の目的からは外れるけれど、立花に似合いそうな服を見つけると、どうしても引き寄せられるのだ、仕方なかろう。


俺は立花の隙を突いて似合いそうな服を素早く手に取ると、手近にいる店員に「これ試着します」と言って立花と服を押しつけた。


「ちょっ、せん、……っ」


はいはい、“先生” はマズイからな?


ヒラヒラと手を振ると、立花は諦めたのか、店員に促されるままに試着室へと消えて行った。



──と言うことを繰り返すこと、数回。


幾つかの紙袋を手に持ち、やっと満足した俺を、立花が疲れた顔で睨んでくる。


が、気にしない。


俺はお前を盛大に甘やかすことに決めたのだ。


似合うと思った服は着せて、褒めて、買う。何の問題があるというのだ。



他にも俺は密かに決めたことがある。


それは──



「先生、だから、自分で開けられますってば」



そう言う立花を待たせて、車の助手席のドアを開けた。


「ダメ。これからは俺が開けるから、お前は触るな。自分で開けるの禁止」


車に限らず、ドアというドアは、俺が開ける。


たとえ立花が開けた方が早くても、絶対俺が開ける。


つい自分で開けようとする立花に、「自分で開けたら、後でお仕置き」と釘を刺すと、立花は慌てて出しかけた手を引っ込めた。


「~~~~~っ、先生っ、横暴っ」




お前は、俺に盛大に甘やかされてれば良いんだよ────。




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