先生がいてくれるなら③【完】
「停電、してますね。一応、大丈夫です。……えっと、そっちは?」
『ここは自家発電があるから大丈夫だよ。お前、いま一人?』
「……はい」
『そっちに行こうか?』
ちょっと待って、それはダメ!
「だっ、大丈夫ですっ。信号とかも動いて無さそうだし、危ないからやめてくださいっ」
思わず血の気が引く。
先生にこんな事がばれたら……。
ううん、藤野先生にばれるのは仕方ない、でも、細川先生に、私と藤野先生のことがばれたら……。
そう思うと、私はこのまま嘘をつき続けるしかなかった。
『……本当に大丈夫?』
不安げに問う先生に、私は「大丈夫です、このまま電気が点かなかったらもう寝ちゃいますから」と返すのが精一杯だった。
『戸締まりと火の元だけは確認しとけよ』
親みたいな発言、やめて下さい……、そんなに私、子供かなぁ……。
そう思いながらも「分かりました」と答える私。
「あっ、あのっ……!」
その後に、いつものように “先生” と呼んでしまいそうになって、慌てて口をつぐむ。
『ん? 何?』
「あの、明日、電話しても良いですか……?』
『うん、良いよ』
「じゃ、じゃあ、おやすみなさいっ」
『うん、おやすみ』
私は素早く電話を切って、再びポケットに仕舞う。