先生がいてくれるなら③【完】

「……もしかして、彼氏?」


細川先生にそう問われ、私は迷いながらも頷いた。


「……そう。彼氏に、敬語なんだね」

「えっ、あっ、年上の人、なので……」


どうしよう、変に思われたかな、藤野先生ってバレてないかな……。


思わず不安になり、必要以上におどおどしてしまう。


「もしかして……」


細川先生が、そこで言葉を切る。


えっ、バレた!? 藤野先生の声、聞こえちゃったかな、……と焦る。



「彼氏って、このあいだ駅前で会った、あの人?」



そう問われ、私はなかなか該当の人物を思い浮かべることが出来なくて……少し考えた末、それが広夢さんだと言うことに気がついた。


そう言えば、藤野家のお食事会に招待されて広夢さんが迎えに来てくれた時に、駅前で細川先生と会ったんだった……。


私は、先生、広夢さん、ごめんなさい、と心の中で謝りながら、小さく頷いた。


「……そっか、やっぱりね」


細川先生は納得したように頷いている。


──良かった、バレてない。


駅前で会った時、私は広夢さんの言動にちょっとだけ焦ったけど、広夢さんがまるで私のお付き合いしている人、みたいに振る舞ってくれた事に今は感謝……かな。


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