先生がいてくれるなら③【完】

細川先生が窓を少し開けると、ふわりと風が室内に入ってくる。


雷雨の後特有の雨の匂いや湿度と共に、部屋の中の空気が少しかき回された。



早く電気が点くと良いのに……。


そうしたら、帰れる。


そうしたら、細川先生に付き合ってる人のことを聞かれて、変な嘘を吐かなくても済む──。




──停電から復旧したのは、それからおそらく1時間ほど後のことだった。


私が家を出たのが夜7時過ぎで、今は9時前……。



私は床に放り投げられたままの玉ねぎを拾い上げて濡れた靴を履き、戸締まりをする細川先生に頭を下げた。


「ご迷惑をおかけして、すみませんでした」

「いや、別に迷惑なんかじゃないから大丈夫。じゃ、行こうか」


細川先生はニッコリと微笑んで、私と共に歩き出す。


あんなに激しく降っていた雨は、もうすっかりやんでいた。


アパートの階段を、細川先生の後に続いて降りていく。



「……ねぇ、立花さん」

「はい……?」

「聞いても、大丈夫かなぁ」

「何でしょうか?」


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