先生がいてくれるなら③【完】
──明日、先生に話さなきゃ……。
そう考えていると、頭にふわりと細川先生の手が乗る。
優しく撫でながら「じゃ、またね」と言って……しばらく静止した後、ゆっくりと手が離れた。
「ありがとうございました」
何度目かのお礼を言って、私は玄関の鍵を開け、扉を開く。
チラリと振り返ると、細川先生はまだその場に立ったまま、少し困ったような微笑みでこっちを見ていた。
扉を閉める前に小さくお辞儀をすると、ヒラリと手を振るのが見えた。
カチャリ、扉を閉めて、鍵を掛ける。
あぁ、なんだか、長い時間だった──。
とても、疲れた。
今から料理をする気には到底なれない。
今日はお風呂に入って、もう寝よう。
明日の朝、早めに起きて料理をすれば良い、どうせ全て冷凍にするのだから。
そして、先生に電話をしなきゃ……。
私は、安堵と疲れの長いため息を吐いた────。